考へるヒント  2007/02/11 last updated 2007/09/23

はじめに

私が高校3年の時の国語の授業で、随筆家の小林秀雄氏の「考へるヒント」の一節を読まされました。難解な文章で、当時の入試によく出題された作品です。今となってはどのような文章だったか記憶が定かではありませんが、タイトルだけが妙に気に入りまし たので、今回の拙コンテンツに借用させてさせていただきました。

なお、このコンテンツは「キスの投げ釣り」に絞っております。他の釣りの場合は異論もあるかとご容赦下さい。 また十分に推敲されていない段階でのアップも多くなります。後から何回も改変しますのでご了解下さい。

それからご意見のある方は恐れ入りますが、トップページにもどりエサ竜さんのサイトの掲示板にご記入お願いいたします。

釣れる魚と釣れない魚 ・・・なんでだろう?

落ちの季節では良型のキスが入れ食い状態となります。こんな時はよほど釣り方を間違えないかぎり貧果におわることもないでしょう。問題は魚がいてアタリもあるのにフッキングしない場合です。

対策として、

針を小型に変える。あるいは逆に大きくする。

おもりを小さくするあるいは逆に大きくする

誘導仕掛けなら固定仕掛けに変更する

仕掛けの全長を長くする

ロッドを軟調のものに変更する

仕掛けの天秤との結節部分クッションゴムなどを装着する。

サビキの速度を遅くする

エサを大きくあるいは逆に小さくする

などなど・・・

皆さんもあの手この手で対応を試みようとするでしょう。この工夫が肝心なんですね。釣果を伸ばす人、そうでない人、その分かれ目が考へることではないでしょうか?

アタリの強弱もヒントになります。大きいアタリがあるのにフッキングしない場合はお魚の活性は高いと思われます。こんな場合は勇気を持って大きい針あるいは懐の大きな針に変えると効果がある場合があります。常にそうとは限らないのが、釣りの深いところなんでけど・・・。

アタリの小さな場合は難問です。お魚が中型以上でも活性が低い場合や小型で活性が普通以下の時もあります。後者の場合、上に列挙したような対策をいろいろと講じることになります。でもエビデンスがありません。

最近の医療ではEBM(Evidence-based medicine)という言葉が使われます。これは治療効果を大規模臨床検査などで検証し、実際の患者さんの治療に生かそうという考えですが、それにあたるEBF(Evidence-based fishing)を 、いやいや・・そんな大それたものでなくて良いので、なにかしら教本のようなものがあればいいなと思います。

なお小型のキスの場合、筆者は釣ることを良しとしません。何回か小型が釣れれば場所変更を考えます。競技会などの場合は仕方ありませんが、釣って帰っても調理に難儀します。飲み込んでいなければリリースしてあげましょう。

実はこれらの問題は特に遠投した場合には以前は顕在化しませんでした。ナイロンラインの場合は途中の伸びが大きいため現実にいろんな事が起きていても感知できなかったのです。PEラインの登場により、考へるヒントが続々と提示されてきました。

近くの魚は釣りにくい?

お魚のポイントが近い場合はアタリ 、それも大きなシグナルがあっても針掛かりしないことがあります。この傾向は距離が近いほど顕著に現れるような気がします。自験例をあげましょう。大ギスで有名な那智の浜、ここは投げ釣りで狙うにはおこまがしいほどの近距離でキスが釣れることがあります。アタリは竿先をグンと引き込む強烈なもので、間違いなくフッキングしたはずなのに、掛かっていないことが結構あります。隣を見やるといかにもファミリー派に見える方が軟調竿のぶっ込みで同じようなポイントで大型のキスをあげたりしてしまいます。システムに問題ありと言えばその通りですが、一応投げ釣り専門を自認しておりますので、手持ちのアイテムではいかんともしがたい・・・。

問題はどうしてそのような差異が生じるか?なのです。重いおもりと天秤の組み合わせである向こう合わせのシステムに距離の近い遠いなど関係ないはずですよね?

投げ釣りの特異性

数ある釣りのジャンルの中で(多分)投げ釣りだけに見られる特徴があります。それは「あわせない」ということです。アタリがあってもあわせるな!という位です。ロッドと仕掛けの距離が長いためあわせたくともあわせられないこともありますが、そのデメリットを克服するために向こう合わせのシステムが進化してきたと思います。ブルッ! とくれば、ほぼ確実にフッキングし、あとはリールを巻くだけという姿が理想ですね。でも簡単には事は運びません。あたかも真夏の逃げ水のように掴まえられない現実があります。

ボート釣りでは?

投げ釣りではおなじみのキスのブルッとしたアタリですが、ライトタックルを用いたボート釣りでは、その前に「クッ!」というアタリが感じられるそうです。その前アタリはエサを吸い込む時の シグナルであり、もたれと も呼ばれております。このサインはキスがエサを口腔内に吸い寄せる時に感じられるそうです。このもたれを取れるか否かで、釣果に大きく差がつくとも言われます。ただし投げ釣りのようにシンカーの先に仕掛けがあるようなシステムにおいては感じ得ないアタリとも言われます。


http://home.highway.ne.jp/bird/sikake15.htm
http://www3.torayfishing.co.jp/Salt/nageqa.nsf/($ALL)/4F81AB0E06DDEC3749256E83003F0418?OpenDocument
 

また前アタリがあってからキスが異常を感じて餌をはき出すまでの時間は極めて短時間であると拝察され
http://www.seabasslive.com/shinjitu-1.html
(これはシーバスの話ですが、キスでも似通っているのでは?)

仮に超人的な能力を持ってもたれを感じ得てもそれは過去の話であり、どうにもならないような気がします。要は前アタリのあるなしに関わらす確実にフッキングさせるシステム作りでありテクニックだと思います。

アタリとはなんぞや?

ではアタリとはどのような現象なんでしょうか? アタリがある時はロッドの穂先が動くのが普通です。ごくわずかであってもロッドにテンションが伝わらなければアタリを感じられません。ロッドの先端を動かす源はお魚の反応なのですが、どのようなprocessを経てそのmotionが穂先に伝達されるのでしょうか?

仕掛けに掛かった(掛かりかけた)お魚の動きが天秤の腕 を介してシンカーに伝わりロッドにシグナルが伝わるはずです。天秤が立っていれば少しの力でも穂先に伝わりますが、寝ていれば結構な力が必要になると思われます。実際に検証しないとなんとも言えませんが、いわゆるショートバイト位の力で穂先が 動くものでしょうか?  ラムダなどの高感度天秤の場合はシンカーが動かなくてもアタリは伝わりそうです。ただし、仕掛けのラインは常にピンと張っていませんので、キスがエサを加えてからある程度の距離を動くことが必要です。古典的なL型天秤ではさらに大きな動きが必要でしょう。

ブルッ!の正体は?

キスのアタリはよくブルッ!と形容されます。確かにそうです。あのアタリはどのような動きから生じるのか?興味があります。
魚見オンラインさんのサイトに http://uomi-online.kir.jp/kako/sakana/etc1-03.html キスが貝殻を突っつく動画があります。最初の方で 貝殻を凄い勢いで咥えあげる?シーンがあり、凄い!と思ってしまいます。良く観察するとこのキスの体長(20センチくらいとのこと)から判断すると貝殻の大きさはさほどではないようです。それなりのチカラがあることは認めないといけないでしょうが、ライン の先のシンカーを移動させるほどの強さであるかは疑問です。筆者は、あのアタリはフッキングしたキスの動きだと思います。
断片的はありますが、Yahoo!動画の釣りサイト http://streaming.yahoo.co.jp/c/t/00151/v00332/v0033200000000310432/
では、フッキングしたキスの遊泳する姿が見られます。体の後部を左右に細かく動かすリズムがブルッに似ているんですね。

キスの捕食についての私見より

キスの捕食についてはデータが不足しておりはっきりしたことは言えませんが、通常私たちが食事をするように、顎と歯で咥えるものではないと思います。歯もあまり発達してませんし、顎の筋肉もあまりないような気がします。頭部を観察しますと、口はストロー状の吸い出しこそ持ってますが、こぶりなおちゃぼ口をしております。口腔内の狭い空間だけでエサを咥えて引っ張りシンカーを動かすことができるかは疑問です。イメージで恐縮ですが、麺類を吸い込むような感じで口腔内だけでなく喉の奥から場合によっては食道の筋肉まで用いないととてもあの力は出ないと思います。

 

ワカサギサイズのキスに競技用キスひねり9号がフッキングしています。この場合は針先全体が口腔内に一度は入っているはずですが、針先の一部分のみが入る不完全な吸い込みでは針先が引っかかってもキスの動き次第では針先がクルッと外れると思います。(渥美西浜での実釣画像)

仮に、エサに針が付いていないとしますね。その場合でもアタリはあるでしょうか?やってみないと判りませんが、ピンギスやワカサギサイズの極小ギスの場合は、針の引っ掛かりなくしてアタリは感じられないような気がします。 問題は口腔内のどこにひっかかるか?ですね。キスのサイズに比して針が大きい場合、口の中にスッポリ針が吸い込まれれば、たとえ吐き出し行為によって排出されようとしても、小さいサイズのそれよりは、引っかかる確率も高いはずです。では、何故?引っかからないか?スッポリと飲み込まれない のでは?という帰結にたどり着くような気がします。針=エサが十分深く飲み込まれないこそ、針先の引っ掛かりが甘い場合は、フッキングしないのではないでしょうか? もっと吸い込みが浅ければアタリすら感じられないでしょう。

大型キスの場合は事情が異なります。アタリがある以上、針はエサとともにしっかりと口腔内に収まっているはずです。バレる要素は 口腔奥への不完全な掛かりによるスッポ抜けと引き釣りなどでは、口先周りでの不完全なフッキングによる針外れと思います。 後者の場合、魚の動く方向に対し唇を支点としてテコの原理で外れることが考えられます。針にはカエシがあるので大丈夫そうに見えますが、口回りの構造的な問題で、カエシの効果が出にくい と思われます。(カエシについては、自分の皮膚に食い込んだことがある方はご存じのように、極めて外れにくいですが、口先の場合は案外外れ易いのでは?と思っております。)

長軸の針は概してフトコロが狭いのですが、 針先からの高さがありますので、しっかり掛かれば外れ難いと思います。針のサイズが小さい場合 はフトコロも狭く、高さも無いため掛かりは浅くなります。キスの反応が顕著な場合は外れることもあるでしょう。筆者はこのスッポ抜けが怖いあまり、針の号数は9号未満を用いることはまずありません。 口先周りの針外れに対しては、軸が長い場合は中途半端なフッキングではキスが動いた際に支点から外れようとする力が大きく働くことになります。短軸の場合は 軸が短いのが幸いするかもしれませんが、フトコロの広さがある反面、針先からの高さはありませんので、喉奥への掛かりは浅くなるかもしれません。ヒネリはどうでしょうか?従来は掛かりやすい反面外れ易いと言われてましたが、口先周りへの掛かりの場合では、外れようとするベクトルに対し緩衝するような働きもあるかもしれません。

参考:針秀さんのサイト http://www.harihide.co.jp/fishinghook.htm に針の各部の名称が載ってます。

 

ダイワの投げカタログを見る・・

ダイワの2007年版投げ専カタログ(投魂07)では新しいキス専用針のD−MAXシロギス投魂T−1のプレゼンがあります。キスの頭部の解剖図などを取り上げ説得力はなかなかのものです。キャッチは”プルっとアタリがあった時には既に勝負が決まっていた!”です。要はこの製品ではバレ難い喉奥へのフッキング性能が抜きんでていると言いたいようです。

http://www.daiwaseiko.co.jp/fishing/dcatalog/index.html

筆者はこのカタログを見て確かに一理あるなぁと感じています。一番参考になったのは、バレを防ぐには喉奥が最高のフッキングポイントであり、そこに針を到達させるのが肝心だと言うことです。トーナメントなどでは手返しの問題もあり、一概に良しとはできないでしょうが、実釣においてバレないというのは大きな魅力です。

餌取り下手のキス?

”水中を高速で回遊してエサを見つけると急接近して襲いかかる”イメージがありますし、いろんな本でもそのような表現がされております。しかし実際はどうなのでしょうか?拙サイトの他コンテンツでも紹介させていただいております有名な釣魚シロギス飼育のコンテンツであるシロギス釣りの研究によりますと、キスは意外にも餌取り下手のようです。 キス様にしっかり喉奥までご馳走を飲み込んでいただくにはそれなりの舞台設定が必要なようです。

再掲 近くの魚は釣れない?

ここでもう一度このテーゼを取り上げます。これには波の性質が関与しているような気がします。波は海水表面のみ動くという特性です。一般には沖の方が水深がありますので、底の状態はより安定しているハズです。波口近くは乱流の影響を受けやすいので、エサも踊りがちです。 就餌がうまく出来ないキスにとってはうまく喉奥までエサを飲み込めない ことも多いでしょう。エサの漂い方が波の動きにハーモニーしていない場合はさらに状況が悪くなりますね。

バレ針におけるエサの状態

針掛かりしない場合のエサの状態を観察してみると、エサが痛んだ状態とハリスまでたくし上げらているケースがあります。口の中に入ればエサが柔らかい場合などは少々痛んでも不思議ないですが、たくし上げられる状況についての分析は簡単ではありません。だいいち、釣れない場合のエサの点検を真面目にしておりませんでした。そのような乏しい経験からの分析で恐縮ですが、たくし上げられる場合のエサはあまり痛んでおりません。どうしてでしょうか? ヒントはその辺りにありそうです。

まず、何故?たくし上げられるのでしょうか?可能にするのは、針掛かりしたキスが仕掛けを激しく引っ張る動きです。慣性の法則ですね。この結果、キスが外れた場合はエサだけが残ります。この状態でキスが残っていることも結構あります。口中深く針が掛かっていればよほど甘くない限りキスはバレないでしょう。浅い場合はすっぽ抜け ますが、エサは口腔内でホールドされてますので、エサのたくし上げの可能性は低いと考えます。すっぽ抜けの過程で再度口唇周りにフックすれば話は別です。

口腔周りのフッキングの場合、エサは口腔外にある部分が多いでしょう。キスの動きの針に対する自由度も高いと推察されますので、バレた場合は強い力がエサに掛かります 。エサも口中内であまり揉まれてませんので、綺麗な状態のまま押し上げられるのではないでしょうか? もともと凄い堅いエサの場合は口腔内で揉まれても”そのまんま”かもしれません。エサが柔らかい場合は一連の動きの中で吹っ飛ばされるため、空針の状態を呈します。

たくし上げらたり、エサが無くなる場合はかなりの力が働くと思いますので、キスのパワーはそれなりに大きいと思われ、サイズも小さくはないでしょう。(もっとも空の場合は投げの動作で吹っ飛ぶこともあります。その場合は問題外です)

このような事態が続けば、対応策として仕掛けのチェンジをした方が良いでしょう。

(9月中旬の南紀釣行で、エサの状態を観察しました。中・小型のキスが掛かっていて、なおかつエサがたくし上げられたケースが散見されました。良型に限った現象ではないようです)

針の形状を再度考案する・・・不都合な真実

上市されているキス針の種類は年々その数を増しております。なかにはよーく見ないと、あるいはよーく見ても判別し難い双子のようなものも存在します。今の針に飽き足らない釣り人のIncentiveがメーカーを動かすのでしょう。私のバイブルのひとつである、「釣りキチの本(針特集)」の一節に、この点にちてO社とG社の社長さんにインタビューした記事があります。ご両人ともその答えはいみじくも「釣り人の要求に応える」でした。

たしかに針の形状、フトコロの差、軸の長短、いろいろな種類があります。でも実戦では空針を使いません。ベイトが針の個性を隠してしまいます。この辺りをどう解釈するか?筆者はコンタクトポイントである針先とその周辺が一番重要と考えますが、皆さんはどうでしょうか?

 

2007/09/23 ここまで記入・・以下続く・・