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recounted2007.01.26

マゴヒラ舞う魅惑の大物場−南紀下里海岸釣行記  2000.06の下里(南紀勝浦町)の釣行記です。       


下里海岸は那智勝浦を経て鯨で有名な太地を越えたところにある全長1kmほどの砂浜海岸である。浜の左手には太田川河口が開け、右側四分の一ほどはテトラ帯となっている。この場所を良く知るクラブ員の話では、全般に遠浅であるが初夏には大型の鱚の実績が高く、夜釣りではヒラメなどのフィッシュイーターが濃い場所である。

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当地に着いたのは二十時半頃、予報では少々の風雨を覚悟したが意外な平穏さに安堵する。早速駐車スペースの正面にあるテトラ帯の脇に釣座を展開した。今回は初心者二名を同行し、うち一人は初めての釣行なのでいろいろと指示しながら竿出しの準備である。夜釣りとあって不意の大物に対応するため鈎は丸セイゴの十二号、ハリスはフロロカーボンの三号を使用した段差仕掛けを用意した。一本目の竿を四色ラインに投入し、初釣行の加藤さんに竿先を見ているように指示する。二本目の竿を準備していると彼から竿先が”ちょん”と動いたとの言葉、早速巻き上げると二十四センチの良型鱚がついており幸先よいスタートに期待が膨らんでくる。その後二本の竿を投入し、うち一本は加藤さんに預ける。私の左手に陣取った長屋さん、片桐さんも次々に竿を投げるが、フグに囓られ苦労している。私も時折仕掛けの点検をするが、餌は残ったままである。

二十二時半頃、ようやく竿にずっしりと重みを感じ小躍りしてリールを巻き上げるが、ずーんと重いだけで魚信が伝わらない。エイか海草かと思ったが、案の定胴長が三十センチほどのアカエイでがっかり。今回のクライマックスはその直後であった。エイのリリースとほぼ同時に左手の長屋さんから歓声があがる。魚の引きが凄いらしく竿を操るのに難渋している。やっとのことで砂浜に引き上げることに成功するが、放心状態で動こうとしないので、大声を出して陸の方へ蹴上げるように指示をする。引き波にもっていかれない為である。夜目だったので魚種は分からなかったがとにかく大物である。近寄って確認すると大型のマゴチである。全長は五十四、五センチだったが幅が異様に立派な抱卵マゴチであった。皆で祝福するが”本人はこれで満足”というのでこういう時こそ攻めなくてはいけないと叱咤激励する。闘いの女神は気まぐれである。運の良いときほど真摯に臨まなくてはいけない。

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長屋氏のマゴチ54.5センチ


私も負けじと投げる腕にも力が入る。一本の仕掛けを丸カイズ十六号にチェンジし途中で購入したキビナゴを付けて次の一発を狙う。しかしその後はいくら投げれども近投はフグ、遠投は無反応の連続で時間だけがむなしく過ぎていく。日が替わり夜中の一時半まで粘るが、夜明けのジアイに全力を傾けるべく仮眠を取ることとした。

気がつくと外はうっすらと明るくなっている。時計に目を移すと四時半になっている。急いで皆を起こし釣場へ急がせる。あらためて釣場を見渡すと、左手奥に太田川の河口が開けている。右手奥には岬状の地形があり、駐車場正面からテトラ帯が伸びている。太田川は現在地からやや左手の地点から浜と平行するように大きくカーブを描いており、護岸堤に阻まれる形で再び海方向へ伸びている。川が海と平行して走る前方の砂浜には小砂利のマウンドが断続的に形成されており、その場所に狙いを定め釣座を移動した。

再開の第一投を左方向へ投入する。大物の可能性も捨てきれなかったので、鈎はカレイの九号、ハリスはフロロカーボンの二号を使用した。あたりは次第に明るさを増していく。海を見るとやや濁りが入っており、木の葉も多く漂っている。最近かなりの降雨があったようである。濁りに対応するために竿先のケミホタルミニをはずし段差仕掛けの幹糸とハリスの結合部に付けて、正面に遠投する。濁りの中でキスへのアピール度を増すためである。なお、明るくなったら速やかにケミホタルを竿先からはずすことをお勧めする。少しでもキャステイング時のライントラブルを防ぐ為である。

さて最初に投入した竿を軽くあおると若干の重みを感じたので巻き上げに入る。さほど抵抗もなくスムースに寄ってきたが波口間際でジグザクに走りはじめた。慎重に寄せ波に乗せて取り込むことに成功する。久しぶりの良型キスでサイズも二十八.五センチあり思わずニンマリする。急いで竿先のケミホタルをとり、仕掛けに取り付けようとすると、振り子置き竿にしていた二本目の竿が前につんのめる。あわてて巻き上げると二十二センチのキスがついている。ふたたび最初の竿を投げ込み、二本目の竿を投げると最初の竿にまたまたアタリがある。こんなやりとりで瞬く間にツ抜けに成功する。しばらくしてさすがにアタリが遠のいた為一本をサビキに切り替えるとまたまたアタリが連発する。アタリのある距離は一様でなく、どうもキスの群は分散しているらしい。サイズも十八センチくらいと小振りになったので、最初の場所で頑張っている皆のところへ様子を伺いにいく。

釣れたかい?の問いに加藤さんにヒラメが来ましたよ。意外な返答にびっくりしたが、早速姿を拝ませていただく。三十四センチ位の小振りなヒラメであった。なにしろ投げ方もままならない初めての釣行ではあったが、丹念に近場をさびいたことが効を奏したのであろう。家に良い土産ができたね、と頑張った彼の労をねぎらう。マゴチにヒラメ、出るとは聞いていたが期待を裏切らないところが凄い海岸である。

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加藤さんのヒラメ



あわてて釣座にもどりネクストワンを狙う。しかし、寝坊したのが災いして陽がどんどん高くなる。それと反比例するかのように鱚のアタリも閑散となっていく。犬を連れた散歩の方々もみな釣りが好きなようで、気軽に声をかけてくる。地元の方の話ではポイントは河口部、浜中央部、左手のテトラの奥にある小さな海岸など広範囲にあるようだ。尺の実績もあるとのことなので、移動しながらあちこちを探るが群が薄いようで、すぐに釣れなくなってしまう。二十匹釣ったところで、十時を回ったので残念ながら納竿とした。

下里海岸は中京地区、関西地区のいずれからも不便な場所にあり、訪れるキャスターも少ない。地元の方の話では、浜全体で大型の鱚が釣れるという。尺ギスクラスも結構出るらしい。夜釣りでは、我々の入釣した右側テトラ尻と左奥の河口付近でマゴチ、ヒラメ、ヒラスズキの実績が高いそうである。名古屋からたっぷり五〜六時間の道程であるが、それに見合うだけの可能性を秘めた場所である。みなさんもビックワンをめざし釣行されてはいかがであろうか。

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私の釣果マックス28.5センチ



アクセス:伊勢自動車道勢和多気IC下車。R42号を一路南下。紀伊長島、尾鷲、熊野、新宮、那智を経て鯨で有名な太地を越えてしばらくのところにある太田川の橋を越えた一つ目の信号を左折。踏切を越えて狭い道を突き当たりまで直進。突き当たりを左折し、カーブした堤防道路を進んですぐに海岸への道があるのでそこを降りてすぐに駐車スペースがあります。

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